スコーピオンDCの怪 ― 2015/07/05 17:42
友人の11スコーピオンDCが調子悪いというので、預かって修理をした。じつは前週も他の友人の同機種を修理しており、連続2台だ。
まず、フルクリーニングがてら全バラして必要な部品を判断する。このリールは某ユーズドタックルチェーンで比較的安く買った中古なのだが、中古ショップで相場より安い玉は、だいたいソルト使用歴ありと考えて間違いない。まずスプールベアリング片方が、ボールが錆びてほとんど回らない状態。加えて、クラッチカム(下図102)の動きを助けるベアリング(下図61)の動きが渋い。1年ほど前、クラッチが切れたまま戻らなくなって彼はこいつを一度メーカー修理に出している。その際は、基本整備つまり各部清掃・グリスアップだけで帰ってきた。しかし、根本原因のひとつがこのクラッチカムベアリングにあることはほぼ間違いない。抵抗に逆らいながら動き続けた影響で、クラッチカムの、クラッチヨーク(下図101)との摺動面が、粗く摩耗している。致命的なレベルではなかったが、シマノホームページのパーツ価格表で調べたところ200円と安価。再び症状が出ると悲しいのでこれも交換部品リストに加えた。クラッチヨークはクラッチカムより固い種類の樹脂でできているのでさらに軽症で、今回は交換を見送った。
巻きにゴロゴロ感があるので最初から予定していた通り、メインギアとピニオンギアは新品交換。減りといってもルーペでよく見ないと分からないレベルなのだが、こいつらの噛み合わせはかなりデリケート。先週ギア交換をした同機種は、最初まずピニオンギアだけ交換してみたところ、交換前とは別な感じのゴロゴロ感が酷く出て、結局メインギアも交換した。メイン:2000円、ピニオン:1000円とまあ納得のできる値段だし、バイクのスプロケット&チェーン同様、同時交換した方が効果が高くギアの寿命も延びる。一方、スコーピオンDCに使われているベアリング類はどれも防錆処理のされたS-ARBまたはARB(たぶんAnti-Rust Bearingの略)であり、大小にかかわらず1個1200円もする。友人と相談の上、いつものミネベア社製ステンレス両シールドBBを、これもいつものイリジョンで調達することに決定。クラッチカム用がDDL-1280ZZ(8x12x3.5mm)で259円、スプール用がDDR-1030ZZ(3x10x4mm)で288円也。
スプールの回りが悪い点がちょっと気になっていたので、買い置きしてあったDDR-1030ZZを使ってスプール系だけ仮組みしてみる。これが驚いた。なんと、DCユニットのコイルを格納している筒状部分の先端が、スプール中央の壁と接触しているのだ。こんなのアリ?
スプールの回りが悪い点がちょっと気になっていたので、買い置きしてあったDDR-1030ZZを使ってスプール系だけ仮組みしてみる。これが驚いた。なんと、DCユニットのコイルを格納している筒状部分の先端が、スプール中央の壁と接触しているのだ。こんなのアリ?
なんでコイルスリーブとスプールセンター壁とのクリアランスがこんなに狭くできてるのよ。スプールシャフト先端とメタルブッシュが0.15mmずつ磨り減っただけで、あっという間に接触してしまう。もしかするとユニットの内側への異物や水の侵入を抑えるためかもしれないが、注油のためにスプールを外すだけでもドライバーが必要な構造であるからして、スプールシャフト端にオイルを点すのが簡単でなく、設計のちくはぐさは否めない。一応、DCユニットの尻には「注油穴」が設けられているが、1mmにも満たない小さな穴からどうやって適量のオイルが点せるのよ。それをするにも、少なくともパーミングカバーを2個のビスを回して外さないといけない。世の中にはネジの締め加減の分からない人の方が多いんだから。そういう人が注油用に注射器を買うとも思えない。
いや、悪いものとは思わないですよ、スコーピオンDC。挑戦的な電子ブレーキを搭載して、あの価格は紛れもなくバーゲンプライス。2台バラして、愛着さえ湧いています。でも、先着xx名様1万円で売ってても、自分は手を伸ばすかと訊かれれば...。その価格設定が逆に、「キミにも買える開発モデル」あるいは「DC依存症製造マシーン」「次はアンタレスやカルカッタコンクエストへステップアップ!」みたいな臭いを感じてしまうんだなぁ。
6000円もするスプールを新調する気はないし、メタルブッシュ(「座金」という名称で100円)や調整座金セットを追加注文して待つのは今回は無しにして、適当な塩化ビニール板をメタルブッシュと同じ径に切り抜いてシムを作り、メタルと注油穴の間に嵌め込んだ。厚みは0.3mmだ。外径は3.5mmで、ちょうど、レベルワインドピンのシムと同じ。この個体ではもともとレベルワインドピンに0.1mm厚のシム(前出のパーツ図48でお値段50円:個体によって有無や厚みは異なる)が入っていたので試しに当ててみたところ、当機の症状を直すには薄すぎたものの、径はぴったりだった。今度やる時があったらこのシムを利用するとしよう。「48番のクロスギアピン調整座金セットください」と注文すれば、数枚セットでも買えるらしい。シマノホームページの調整座金セットの説明によると 0.2mm x 3枚が来ると思われる。
いや、悪いものとは思わないですよ、スコーピオンDC。挑戦的な電子ブレーキを搭載して、あの価格は紛れもなくバーゲンプライス。2台バラして、愛着さえ湧いています。でも、先着xx名様1万円で売ってても、自分は手を伸ばすかと訊かれれば...。その価格設定が逆に、「キミにも買える開発モデル」あるいは「DC依存症製造マシーン」「次はアンタレスやカルカッタコンクエストへステップアップ!」みたいな臭いを感じてしまうんだなぁ。
6000円もするスプールを新調する気はないし、メタルブッシュ(「座金」という名称で100円)や調整座金セットを追加注文して待つのは今回は無しにして、適当な塩化ビニール板をメタルブッシュと同じ径に切り抜いてシムを作り、メタルと注油穴の間に嵌め込んだ。厚みは0.3mmだ。外径は3.5mmで、ちょうど、レベルワインドピンのシムと同じ。この個体ではもともとレベルワインドピンに0.1mm厚のシム(前出のパーツ図48でお値段50円:個体によって有無や厚みは異なる)が入っていたので試しに当ててみたところ、当機の症状を直すには薄すぎたものの、径はぴったりだった。今度やる時があったらこのシムを利用するとしよう。「48番のクロスギアピン調整座金セットください」と注文すれば、数枚セットでも買えるらしい。シマノホームページの調整座金セットの説明によると 0.2mm x 3枚が来ると思われる。
さて、注文したパーツが1週間とせず揃い、本組み立てに入る。いつもの如く、スプール用の汎用BBは片シールド化してグリス抜きし、謹製ケミシンオイルで潤滑。クラッチカム用はフェザーライトな回転性能は必要なくそこそこの性能の維持が重要なので片シールド化もグリス抜きもせず、逆に、シールド面を適度に覆うようにリチウム石けんグリスを塗布して取り付ける。細工は流々。スプールを指で弾くといつまでも回っている。クラッチの切れや戻りもクリスピーだ。
噂には聞いていたが、シマノのメーカー修理はこんなもん? このケースに関する限り、医者だったら「ヤブ」と呼ばれてもしかたないのではなかろうか。もともと頼る気はないが、やっぱり自分でメンテするのが一番だと再認識した次第。
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